学習素材「ツバキ油」
 食用の植物油の種類は、WEB検索で手軽につかむことができます。現在流通しているものを紹介しますと、次のようになります。

 ダイズ油(大豆の種子)
 ナタネ油(菜の花の種子)
 コーン油(トウモロコシの胚芽)
 メンジツ油(綿の種子)
 ベニバナ油(紅花の種子)
 ゴマ油(胡麻の種子)
 オリーブ油(オリーブの果肉)
 ヤシ油(ココヤシの果肉)
 バーム油(アブラヤシの果肉)
 ヒマワリ油(ヒマワリの種子)
 コメ油(米ぬか)
 ピーナツ油(落花生の種子)

 ここで取り上げようとしているツバキ油は、一覧の中には見付かりません。店頭で手軽に入手できる油ではないことがお分かりいただけると思います。また、ツバキ油づくりの体験教室を開いているところや個人的にツバキ油づくりをしている方はわずかです。学校関係では、長崎県新上五島町立津和崎小、島根県安来市立布部小の2校が実践しています。もちろん商業ベースでは、伊豆大島がよく知られています。地域限定の素材ではなく、東北地方から九州地方まで点在しています。
 私が子どものころは、食用油といえば菜種油でした。油屋さんがドラム缶に詰めた菜種油を運んでくると、収穫した菜種を運び出して交換し、一升瓶に油を入れている風景を思い出します。やがて、大豆油が登場するとこうした風景は見られなくなってしまいました。その当時、ツバキ油は食用ではなく、整髪料でした。
 ツバキ油のヤブツバキは身近にどこでも見つけることができる木です。実のなるころには、学校からの帰り道に笛を作って遊びました。実の殻はかなり硬いものの、小刀の先で3mmほどの穴を開け、中身を針金でつついてほじくり出します。このとき、中の実は油っぽいということが分かりました。硬い殻だけになるとできあがりです。唇に当て、穴に向かって勢いよく吹き付け、鳴らして遊びました。
 ヤブツバキはどこで見付かるか、実がなるのはいつごろか、どれぐらいの実を集めないといけないのか、どんな方法で油を取り出すのか、取り出した油で何をするのか、手軽にツバキ油が利用されないのはどうしてか、ツバキ油はどんなことに使えるのかなどの疑問を解き明かしていく中で学びが広がるきっかけもつかめると思います。食用油の歴史、消費量、食用廃油燃料の研究、健康への影響などに発展していく可能性を秘めています。
 身近にありながら、どこでも利用されていない自然の学習素材は、子どもたちの興味を引きつけやすいと思います。