学習素材「海草」
 海草は、海辺に近い立地条件の学校や臨海学校を実施している学校では、選択肢の一つとして取り上げられる学習素材です。自然に生えている海草は、自由に採取してもいいというところがほとんどです。しかし、例外的に漁業権を設定して、制限を加えているところも実際ありますから、海域の漁業協同組合に確認した上で計画を立てると安心できます。
 例えば、大分県の第1種共同漁協権の設定されているところでは、オゴノリ、フノリ、トサカノリ、ムカデノリ、テングサ、アマノリ、ホンダワラ、ヒジキ、ワカメ、クロメ、モズク、アオノリ、ヒトエグサについて勝手に採取できません。問い合わせ先を調べて、子どもたちが聞き取りをするのは、言うまでもないでしょう。
 私は、海辺育ちでないだけに海草の知識は多くありません。それだけに地元の方の知識は海草だけでなく、安全面についても大切な情報源となります。干潮時にいけば安全と思っていても、季節や天候によっては思いもよらない波に出会うこともあります。船が航行する近くでは、船が通った後の引き波にも注意がいります。さらに滑りやすい岩場を移動するときの履き物も配慮がいります。ライフジャケットや浮き輪を用意したから万全とは言い難く、岩場の危険性だけはしっかり把握してほしいと思います。磯釣りをしたことがある先生ならば、予見できることも多いのではないかと思います。
 私が口にしたことのある海草といえば、ワカメ、コンブ、ヒジキ、モズク、テングサ、アマノリ、アオノリが圧倒的に多いです。テングサ以外は海草の色や形が残ったまま食べますが、保存のために乾燥させたり、塩蔵にされたりします。テングサも保存には、乾燥という方法をとっています。必要に応じて煮出し、冷やして固めるだけです。海草状態で市場に出ることはまずありません。家庭でところてんを作るときは、1回だけで終わらず、2番煎じをしていました。2回目のものはやや水っぽいものの、凝固します。トサカノリは海藻サラダや刺身の付け合わせで出くわすぐらいです。
 地域の特徴ある海草料理を食べたことは数回でした。丹後半島では、ウゴと呼んでいて、「海のコンニャクです。」と説明されました。つぶした海草が入っていますので、ザラッとした食感があります。実際に食べた感想は、クセがないこと、コンニャクほどなめらかではないことぐらいです。
 海草を学習素材として取り上げるよさは、単に食材探しだけではないということです。海草が豊富にあるということは、その海域が健全であるという証拠になります。例えば、海草は魚の産卵場としても有効に働きますし、稚魚が育つ場所にもなります。また、海草を餌とする貝類の繁殖場所にもなります。サザエやアワビは、海草の生えるところにしかいません。人間の都合で、海草を乱獲すると海草がなくなるだけでなく、多くの種類の魚介類の存在を脅かすことにもなるといわれています。こうした、海の中での生き物の連鎖を解き明かしていくことも可能でしょう。
 ダイエット食品という先入観より、貴重な微量栄養源としての価値を見いだすことの方が大切です。主要な栄養が豊富な食品より、繊維の多さや間接的に身体に働く成分こそ食育につながります。