学習素材「コンニャク」
 毎日食べるという人は少ないでしょうが、和食の食材としては欠かせません。子どもたちにとっては、おやつやデザートとしてのコンニャクゼリーのほうがなじみ深いでしょう。ところが、コンニャクは何からできているか、どんな植物か、生えているのを見たことがあるかなどの問いに対して、答えられる子どもは大変少ないはずです。大人でさえ、商品としてのコンニャクは知っていても、植えられているのを見たことがある人はめったにいません。
 明治生まれの祖母がコンニャクイモを畑で栽培し、コンニャクを作っていた記憶はあります。しばらくの間は小さなイモが畑の隅で生きながらえていたのですが、今となっては消滅してしまいました。近所周りでも自家製のコンニャクを作っている方は、一軒だけになりました。
 コンニャクはサトイモ科の植物で、放任状態でもよく育ちます。ただし、高温多湿は苦手ですから、梅雨時から夏にかけて蒸れないような場所が適しています。イモや茎が傷つくと腐れやすいという特徴がありますから、イモの扱いはていねいにします。また、強風で茎が倒されると致命的ですから、風通しが強すぎるところは避けます。イモの植え付けは芽を上にして、45度くらい傾けた状態がよいそうです。サトイモのように丸い大きな葉ではなく、切れ込みがあり、茎の表面にまだら模様がついています。野草のマムシグサ、ウラシマソウと草姿はよく似ています。コンニャクの原料として使うには、2年間育てたものが効率はよさそうです。しかし、1年ものでも大人の握り拳ぐらいにはなりますので、十分使えます。
 コンニャクづくりの行程は簡単に調べることができると思いますので、ここでは紹介しません。地域の中に名人がおられれば心強いでしょう。コンニャクはそのままでは固まりません。行程の中に灰汁(あく)を入れる場面があります。元もと灰汁も自家製でした。木を燃やした後の灰を水で溶き、上澄みを使っていました。現在は同じ成分の水酸化カルシウムの粉末を水で溶いて使っています。

 コンニャクを学習素材としてお勧めする一番の理由は、栄養といえるものがほとんどない点です。滋養のほとんどないものを食べ続けてきた理由は是非とも解き明かして欲しいところです。学校で栽培される食材のほとんどが、体に必要な栄養のあるものが主となっています。栄養源として優れていると同時に食味がよいものが食材として受け継がれてきた中で、コンニャクは少々訳ありです。
 コンニャクづくりの行程で、灰汁を入れてもうまく固まらなかったという話を聞くことがあります。豆腐づくりでもそうですが、説明通りににがりを入れたのにうまくいかなかったという失敗談を聞きます。1回だけの体験活動だから、成功体験をさせたいという先生の思いが強いと、失敗したときに再挑戦へ結びつきません。なぜうまくいかなかったのか追究して、今度は成功させようという流れを仕組んでこそ、学びは深まると思うのです。灰汁の濃さと量、水加減、温度・・・どこに固まらない原因があるのかを学び取ることも大きな目的になります。名人の講師は経験上ちょっとしたコツをつかんでいますから、その部分にふれないと体験しただけに終わってしまいます。つまり、自分だけでもできるという自信が体験を通して身に付けば、「生きる力」となって学びの成果になると思うのです。