学習素材「ケール」
 ケ−ルは原種に近いキャベツの仲間です。ケールの葉を砕いて搾った汁が青汁です。栄養面で注目され、ひそかに味がなじめる方は飲み続けていると思います。青臭いにおいと青菜の味が好みを分けるようです。市販のものは、リンゴやパイナップルの果汁を混ぜて飲み口をよくしています。加工しているところでは、生の葉を絞ってそのまま調整するのではなく、フリーズドライで顆粒状にしたものを果汁と混ぜ、年間を通して供給しています。
 ケールとの出会いは昭和30年代になります。栄養改善のために小学校で数年間青汁を飲み続けました。においと味にはなかなかなじめず、飲み干した後に飴が食べられるのを楽しみにしていただけでした。6年前には、子どもの祖父、Yさんが栽培・加工出荷をしているのに出会いました。そこで、余った苗をいただいてウサギの餌として学校で栽培していました。
 自家用に栽培したことはありませんが、キャベツを作るのと全く同じです。4月播種、5月定植となり、秋まで葉は収穫できます。葉を育てるために乾燥鶏糞が効果的な肥料になります。葉が大きくなるにつれ、モンシロチョウの幼虫が葉を食害します。キャベツほどではありませんから、さほど気にかけなくてもいいと思います。高冷地ではこうした食害は少なくなりますので、捕殺するだけで対応できます。どうしても食べられたくない場合は、隙間があかないように防虫ネットをかぶせます。殺虫剤に頼らない栽培をしようと思うとこれが一番手軽です。ただし、隙間があるとチョウは潜り込み、ネットの中で飛び回るということもあり、注意が必要です。キャベツのように巻くことはなく、茎は高く伸びていきます。大きくなった葉を収穫するときに葉柄の途中からおると、葉柄の根本から脇芽が出るので、必ず葉の根本を手折るとよいそうです。これはYさんから教えていただいたことです。
 今年になってから、生葉をいただく機会がありましたので、調理してみました。繊維分が多いため、煮物にするときは、しっかり煮込まないと硬すぎました。千切りにして、油炒めで調理するのが一番無難なようです。油と出会うと独特の青臭さはかなり薄らぎました。キャベツと比べて歯ごたえがあり、味もしっかり伝わってきます。実際に試食してみて、青汁にして加工される理由が納得できました。

 ケールを学習素材に使うとき、一番の動機付けは栄養面でのよさと苦手な野菜の克服が考えられます。栄養満点であるが、美味しくないので、工夫せざるを得ないわけです。栽培は簡単ですし、葉を収穫する期間も6月末から9月ぐらいまでと長いです。
 苦手意識、食わず嫌いは初めて口にしたときの印象が焼き付いてしまいます。苦い、辛い、臭いという感覚は、即嫌いになってしまいます、逆に、甘い、いい香りというのは抵抗なく入っていきます。たったそれだけのことなのですが、自分で手をかけて栽培すると意外と覆すことができます。
 子どもたちが嫌いな野菜として、ニンジン、ピーマン、ブロッコリー、カリフラ
ワー、セロリなどが代表格として登場します。理屈で説得するよりも、自分で栽培して調理するという過程を体験する方が先入観は払拭しやすいでしょう。
 ピーマンとジャガイモを栽培したときのことです。ピーマンは嫌いだから、絶対食べないと言い張る子どもも、ついに食べてしまいました。ジャガイモを茹でて、つぶし、炒めた挽肉とあわせてピーマンに詰め、それを油炒めしただけのことでした。ピーマンのほろ苦い味は、買ってきても、自分でつくっても変わりはありません。唯一違うのは、自分が手をかけて成長を見守り、世話をしてきたという気持ちが入り込むことです。
 好き嫌いは、食生活の中ですり込まれます。例えば、梅干し嫌いの家庭には、梅干しがありません。父は納豆を食べるが、母は食べないという場合、子どもはどちらかにすり込まれてしまいます。食べたいものが自由気ままに選択できる中で、好き嫌いが分かれる作物を栽培すると学ぶことはたくさんあります。そこまでして、食育を学校が引き受けざるを得ない状況は、自給率の低下と生産体験をしていない子どもが増えたことによります。命を育てて、命をいただき、我が命を生きながらえさせることは、生きることの基本です。