学習素材「アマランサス」
 アマランサスは、栄養価が優れている中南米の作物として紹介されるようになりました。何度かテレビ番組でも出会うことができましたが、全国的に栽培する人が増えたとはいえないようです。東北地方では10年ぐらい前から、転作作物として少しずつ生産量が上がっているようです。現物との出会いは、通信販売で入手した岩手産の煎餅に入ったものを食べたのが最初だったと思います。スーパーグレインとして気になり、栽培の可能性と種の入手を試みました。暖地向きに品種改良されたアステカ種は早稲種で、5月播種、8月収穫となります。岩手県から仕入れたものは同時期に播種しても、9月収穫でした。
 なぜ、暖地向きとして改良されたかという一番の理由は開花前後の倒伏でした。台風や風雨に対して成長がピークのときは大変弱いということが、栽培してみて実感できました。結実後の穂はかなりの重みとなり、台風の直撃を受けなくてもちょっとした風雨で倒れてしまいました。間に合わせの支柱で対応しましたが、確実に収量を上げようと思うときちんとした支柱の設置が不可欠です。
 現地では、若い葉をおひたしや油炒めにして食べているということでしたが、食感はあまりよくないですから、是が非でもお勧めというわけにはいきません。白米と一緒に炊き込む、粉にしてクッキーに入れる、小麦粉にそのまま混ぜ込むなどの調理法があります。

 栽培2年目で経験不足ながら、取り入れまでの流れを紹介します。
 元肥は油かすを使って、種まき1週間前ぐらいに耕します。畝を作らず5〜60cm間隔に点蒔きします。畝幅の間隔は1〜1.2mぐらいです。発芽後、本葉4〜5枚で1本立ちになるよう間引きます。その後、草取りをかねて管理機で土を寄せて、畝を作り、水はけを促します。60日をすぎると草丈もかなり高くなってきますから、支柱を立て、倒伏を防ぎます。この間、結実するまでの作業は草取りだけです。
 収穫適期は、90日後ぐらいで、穂を軽く握って小さな種が手にくっつくようになったころです。収穫は、ひとまとまりの穂となるよう、茎の途中を切り取るだけです。干木に架けて乾燥させるのが一番手軽ですが、実がかなり落ちやすいという心配はあります。私はブルーシートの上で乾燥させましたが、夜間しまうときに蒸れないように広げる場所を確保します。
 穂の水分が少なくなってカリカリの状態のとき、足で踏みつけて脱穀すれば能率的です。選別には1mmのふるいが市販されています。あとは風力を利用した「とうみ」を使います。収穫で一番手間取るのはこれらの選別作業で、道具がないと難儀をします。穂の水分が一番少なくなるのは、炎天下にさらされているときだけですから注意してください。空気中の水蒸気を取り込みやすい性質があります。
 中南米の高地で雨量が少なくても栽培できる特徴を持っています。日本の高温多湿はやや不利となりますが、生育に影響はありません。雨が降らないためにしおれるということはなく、日照りが続いても水やりをすることはなかったです。ただ、虫の吸汁の被害にあいやすい面はあります。カメムシにいたずらされたものは黒くなりますが、さほど気にはなりません。大きな被害を及ぼす病虫害はありません。

 アマランサスは、ケイトウの仲間です。ケイトウの種は黒色、アマランサスの種は黄土色で、種の形状はよく似ています。脱穀したものがそのまま食材になります。米に混ぜて炊飯し食べていますが、困るのは洗うときです。茶こしの中で洗えば、こぼすことなく簡単にできます。味や香りは感じない食材です。栄養価の高さのみに着目して、多様な献立に混ぜ込むことができます。粉にすれば、さらに利用できる献立が増えるでしょう。

 アマランサスを学習素材として取り入れる場合、収穫と脱穀が夏休みにならざるをえませんから、半日程度、自主参加を呼びかけて日程を組む必要があります。乾燥や脱穀の方法を伝えておけば、量を加減して大きなビニル袋に入れて持ち帰り、各自で挑戦するという方法も可能です。休み中だからどうにもならないとあきらめるのではなく、どんな方法を選ぶか、柔軟に考えていただきたいと思います。
 特徴は以上の説明からお分かりいただけると思いますが、珍しさ、栄養価、作りやすさ、乾燥に強い、病虫害の少なさなどのメリットからお勧めです。

発芽の様子です。

7月頃の生育状態です。

収穫してから選別した実です。


 アマランサスの増殖をしてみたい方、種が欲しいという方は下記宛てにどうぞ。
707-0044美作市海田2552 福田昌弘
(80円切手を貼った返信用封筒を送ってください。)