実践事例を見る(48)
 「総合的な学習らんど」のWEB上に紹介している学校のリンク先をたどりました。
学校名 新富町立上新田小学校
所在地 〒889-1406 宮崎県児湯郡新富町大字新田16416
URL http://www.miyazaki-c.ed.jp/kaminyuta-e/index.html
電話 TEL 0983-35-1016 FAX 0983-35-1305
学年 3,4,5,6年
テーマ
食に関する指導
カテゴリー 食農

 平成16年度、食育の研究発表会をしており、研究の一端をWEB公開していました。教育活動全体の中で食に関する指導を関連的、横断的に扱っていく部分と家庭や地域との連携、啓発の取り組み部分に仮説を設けていました。
 特徴的な考え方として、自己管理能力の育成があります。これまでの健康教育においては、知的理解の面で一定の成果が上がりながら、実践的な部分の定着がネックになっていました。つまり、「分かっちゃいるけどできません。」という個々の課題が一向に解決されないまま、研究が繰り返されていたと私は受け止めています。
 これまでの研究実践と趣を異にする食育の取り組みは、総合的な学習の時間があることによって、教育活動全体の総合的な学習効果が期待できます。弾力的に扱える時間は、知識が有機的につながる学習場面を組み入れやすいということです。既成の特別活動の分野で扱おうとすると、特別活動のねらいに制約されて中途半端な実践で中断していたように思います。以上のことから、上新田小の研究実践は注目に値します。

 食と農業に関する実践を通して、たびたび出くわす子どもたちの特徴的な反応があります。嫌いなものを食べる子どもが出てくるという発見です。自ら生産にかかわり、収穫まで体験した子どもたちは、集団で調理する過程で嫌いなものも口にすることがあります。栄養があって、体にいいと口で洗脳しても説得力は乏しいのに、みんなでワイワイ言いながら調理していると美味しそうな気分になり、友達が美味しそうに食べているとその気になって美味しそうに味わっています。
 食に関する先入観は、まず家庭で作られていきます。梅干し嫌いの大人がいる家庭では、子どもたちが梅干しを食べる経験が極端に制約されます。外で食事をしたときに梅干しと出会うと、「こんな酸っぱい、ニュルッとした食感はぞっとする。」と梅干し嫌いから負の価値観をすり込まれ、食わず嫌いになります。もちろん、食べ物の好き嫌いは個人の嗜好ですから、1つや2つ嫌いなものがあっても支障はありません。しかし、豊富な経験を通して嗜好が作られるのではなく、身近な家族から嗜好がすり込まれることは、知識だけが先行することを許してしまっています。本人が口にして、嗜好を判断していく体験的な過程は大切にしたいところだと私は考えています。

 総合的な学習の時間が機能するかどうかは、ねらいを明確にし、子どもに育てたい力を描くことにかかっています。そして、あらゆる学習素材の中から実践を通して学びが成立するかどうかを検証できるのは現場の先生だけだと思います。