義務教育・意識調査
 文部科学省のWEB上に「義務教育に関する意識調査」結果の速報が公開されましたので、総合的な学習の時間についてのいくつかに注目してみました。大ざっぱに肯定的傾向、否定的傾向それぞれ2ランクずつまとめて比較検討しています。

○総合的な学習の時間の今後のあり方(小中あわせての担任をしている先生の否定的傾向、肯定的傾向の割合)
もっと充実すべきと考えている先生は小中あわせて +31.8% −61.9%
このままでよいと考えている先生は +18.4% −77.8%
もっと国語や算数・数学などの教科の学習を重視すべき +77% −19.6%
なくした方がよい +46.3% −46.3%
国で指導内容や学習活動を明確に示すべき +43.3% −55.8%
基礎的・基本的な内容の学習がおろそかになる +70.4% −26.9%

 創設された時間そのものの是非を問う部分では大まかに見て2分されていますが、否定的な割合が高いのは中学校の先生です。新聞発表の時に書かれていたとおり、ネックになるのは教科担任制が大きく影響していると思います。ただし、教科担任制だから、物理的に困難ということにはなりません。やる気のある担当者を配置し、学習素材を開発し、実践している学校も数多くあります。また、職場体験学習に見られるように、これまでの取り組みと平行して、時間の位置づけを工夫している学校もあります。
 時間配分を理由に基礎学力の低下を考える先生方は3分の2を超えています。しかし、これまでの教育改革によって主要教科にさかれる時間は減り続けてきたわけです。本当にたっぷりと時間をかけてやれば、必ず学力の保障はされるという根拠はどこにもありません。問題とすべきは指導方法や指導内容だと私は考えています。何を根拠にそんなことが言えるのか、と言われれば、落ちこぼしが作られてきたということで説明できることです。学力向上のための研究をしたり、これまでの教科指導の研究で培われてきたことを再度実践したりする中で明らかにされています。
 話は横道にそれますが、少人数指導の成果も前面に出されてきているものの、確実な方法ではないのです。45人学級から40人学級へと人数を減らし、やがては欧米なみに20人学級にすれば、指導効果、学習効果ともに向上するかというと保障はありません。すでに20人学級が実現している学校も数多くあります。その学級がずば抜けていると断定するわけにはいきません。何をどう教え、学びをかき立てるような先生の力量の方が影響は大きいと思います。

○総合的な学習の時間の好き嫌い
小 +60.0% −11.2%
中 +46.2% −14.3%

 学習の中身や投げかけ方がうまくいけば、子どもたちは順当な評価を示していると思います。学習の中身が見えていない段階で一方的に「これをやります」と押しつけてもうまくいかない、おもしろくなくなるのは当たり前のことです。教科の学習でも同じことはいえるでしょう。「何をどうしていいかわからない」子どもにとっては授業時間が
苦痛になります。

○「総合的な学習の時間」についての評価
小保護者 +73.2% −20.4%
中保護者 +62.9% −29.1%
小担任  +56.6% −40.4%
中担任  +43.5% −55.2%

 保護者の否定的な評価が少ない点は、意外な結果だと思いました。生活に結びつく、受験にかかわらない、子どもの意欲が高まるなどのいい面を素直に評価していただいた結果だと思いました。先生よりも保護者のほうが的確に子どもをとおして評価できているようです。
 否定的になる先生は、指導法が分からない、予算がつかない、基礎学力が落ちるなど、どちらかというと条件整備ができていないことを理由に挙げています。これでは、教科の学習をしても自助努力が足りなくなるのではないかと心配します。


 配当時間の削減は一歩譲るとしても、時間の廃止は納得できません。OECDの調査からも明らかなように現在の子どもたちに身に付けさせたい力は、いわゆる「総合知」に集約できると思います。規制が少なかったころの場と時間はもはや学校で確保するしかありません。そして、総合的な学習の時間をとおして、生活体験で培ってきた力を取り戻す営みが進められているという認識を広めることに尽きます。