総合的な学習と課題づくり
 地域の学習素材をにらみながら、投げかけの活動を実践した方が多い1学期だと思います。その中で、課題づくりがうまくいかないと悩んだ方はいないでしょうか。なかなか子どもたちが課題らしい課題を持たなかったと悔やんでいる方はいないでしょうか。授業を変えなくてはいけないと思いつつ、ついつい先生主導で「こんなことをしてみたら」「こんなことを解決していかないといけないね」と先手を打った方はいないでしょうか。
 これまでの自分の学習の仕方や指導の仕方から判断すると、先生という職業は「問題を提示して授業を進める」習性が強いだろうと思います。子どもたちが反応しなければ、自問自答のおしゃべりをしてしまうことさえあると思います。いくつかの大事な点を示して、課題づくりに慣らされた子どもを育ててほしいと思います。

 一つの現象から考える練習をします
 かつて私がかけだしのころ、理科研究の研修グループで行き詰まった私たちに指導担当のベテラン先生が次のような演示実験をされました。ビーカーに水を入れおもむろに塩を水の半量ほど入れ、次に砂糖も水の半量ほどを入れました。「先生方、このビーカーを下から加熱します。どのようになるか予想し、実際に加熱した結果を予想に照らしながら考察してみてください。」というのです。予想が外れることにより、何でこんなことになるのだろうと、常識として獲得していた知識を総動員して解明をした覚えがあります。プロセスは解説しませんが、「自ら主体的に問題解決をする」手法を実感することができました。

 不思議だな、珍しいな、どうしてだろう、分からないなと実感する練習をします。
 知識を伝えるだけの授業や、問題を先生が設定して先生自身が解決してしまう授業から脱出する試みです。先生自身が不思議がることにより、解決されていない問題はいくらでもあるんだなという実感を子どもたちと共有すればいいわけです。ものが落っこちることに対して「そんなん当たり前だ」と判定を下せば、もうそれ以上考える必然性はないでしょう。「なぜ落ちるのだろう」と結論を先送りすれば、考える余地は残ります。
 知的好奇心をかりたてていくことによって、課題づくりが苦手な子どもたちは、徐々に育っていくと思います。課題となることを理屈で示して誘導することなく、こんな課題に気づいてほしいなという願いを持って示していくことで、まねていく子どもたちになるでしょう。
 まず、課題づくりは先生が教えることです。次に個々の課題に広がりを持たせる働きかけをしてみてほしいと思います。