実践事例を見る(40)
 「総合的な学習らんど」のWEB上に紹介している学校のリンク先をたどりました。
学校名 高松市立檀紙小学校
所在地 〒761-8042 香川県高松市御厩町816番地
URL http://www.edu-tens.net/syoHP/dansiHP/sogogakusyu.htm
電話 電話:087-885-1715 FAX:087-885-1789
学年 3年「檀紙の町博士になってみんなに紹介しよう。」
4年「私たちの津内山を調べてみんなに紹介しよう」
5年「見つめよう自然,つくろう私たちのビオトープ」
6年「学ぼう地域の歴史,体験しよう先人のくらし」
テーマ
まゆみっ子学習
カテゴリー 地域、環境、伝統工芸、歴史

 香川県で紹介されている取り組みを閲覧していて、一つの共通点のようなものを見いだすことができました。それは、香川大学附属高松小学校の公開研究会に2回参加したことにより、そこで取り組まれている考え方が色濃く反映していると感じました。
 生活科も含め総合的な学習を連続させる考え方、知の総合化を図る考え方、単発的な取り組みは避け教科を横断して構成する考え方などです。結果的に、各学年のテーマが大変似通っていて、内容的に地域の特性を盛り込んでいるという傾向がありました。
 平成16年度、1学期、6年の流れを以下に引用します。一読されると上記の考え方、社会科の延長線上に見えてくるものがお分かりいただけると思います。

 私たちは,3年生のまゆみっ子学習で,校区の伝統的な焼き物である「御厩焼き」について学びました。6年生になり,歴史学習の成果をふまえ,「焼き物と暮らしの変化」というテーマで取り組みました。
 まず最初は,焼き物のルーツ縄文土器作りに挑戦しました。土器づくりの最初は粘土をこねることからです。先生が荒練りした土を思い思いに練っていきます。合い言葉は,「耳たぶくらいの柔らかさ,人肌くらいの温かさ」です。10分位練ると,少し粘りがでてきました。
 ビニールに入れて2日ほど寝かせ,練って,また寝かせ・・・。何度も繰り返すうちにいい粘土ができあがります。粘土で同じ太さのひもを作ります。これを使って,輪積みという方法で形を作っていきます。このとき気を付けることはしっかりひもとひもの間を塞いで,くっつけることです。3段ほど積んでは形を整え,さらにまた積んでいきます。外側は後でも加工ができますが,内側はそれができないので,内側を丁寧に整えます。また,指でつまんでみて,特に厚いところは厚さを整えておきます。
 積み上げが終わり,しっかり形を整え終わると,表面に縄を強く押しつけるようにして,転がします。何回か転がす内に,表面の小さなひびが塞がって,土が締まってきます。縄は模様であると同時に,外側表面を引き締めるローラーの役割を果たしています。縄を転がした後,竹,木,石などを利用して,思い思いの文様を工夫して付けていきます。土器の使用目的にあった,願いのある文様を考えました。
 2週間ほど乾燥させ,校庭の片隅で野焼きをしました。朝から2時間程空焚きをし,地面をよく乾かしてから,土器を焼きました。
 最初は,よく温まった地面に土器を並べ,土器の中の湿気と空気を抜いていきます。これを,丹念にやらないと土器がはじけてしまいます。「はじめチョロチョロ」。最初は,周りに薪を並べ,熱であぶります。直接火が当たらないように,気を付けて,土器を回しながら,あぶってやります。次第に,土器の色が茶色から,紫がかってきます。  いよいよ本炊きです。薪を土器の上に組んで,ドームを作り,火に命運を託します。「バチッ」,「パーン」と音がするたびに,どきどき。土器なのか,それとも薪か? 火が燃え上がったところで,みんなで抜いた校庭の草をかけていきます。こうすることで,酸素をストップし,黒色で,堅い土器に仕上げていきます。
 薪が燃え尽きた後,灰の中から土器をとりだしました。1個1個確認していくと,割れたのは1個,
ほかはきれいに焼き上がっていました。取り出した後,水を張ってみました。すると,ほんの数十秒,水が沸騰し,お湯になりました。ふれあい集会で,これまで体験したことを全校生に伝えました。

 2学期に自分たちが作った土器を使って調理を計画しました。そこで,縄文クッキーを作るグループは,材料を工夫(ドングリ代わりにそば粉を使うなど)して,フライパンを使って試してみました。土器を使って試しに焼いてみると,フライパンより時間はかかったけれど,ふっくらと焼けました。しかし,味は今ひとつで,各自夏休みに工夫してみることにしました。
2学期の縄文クッキー作りが楽しみです。
 縄文スープグループは,自分たちの土器を使って,煮干しをだしにしてスープを作ってみました。土器の形によって,スープが沸騰するまでの時間がかなり違うことが分かりました。土器の形によって,火の当て方を工夫する必要があると思いました。夏休みには,スープの味を追求したり,火おこしから土器の使い方を調べたりしました。
2学期の縄文スープづくりが楽しみです。
 古代米グループは,秋に,自分たちが作った土器で米を蒸したり炊いたりします。そのために,今は,古代米(赤米)と現在の米(ハエヌキ)を育てています。大きく育っているのが赤米です。実は,まだ,ついていません。ハエヌキの方は,小さいけれど実ができてました。成長に差があるんだなあと思いました。2学期においしい米を食べるのが楽しみです。


 引用が長くなってしまいましたが、6年生の子どもたちが体験を通して学んでいることはよく伝わってくると思います。

 大きな枠組みが毎年繰り返されても、一つ一つの体験的な学習を何にするかで、先生の工夫や子どもたちの思いを生かすことができます。前年と同じことをしてしまうとマンネリ化は避けられませんから、選択肢を積み上げていくことは大切にしたいところです。
 もう一つ気を付けたいのは、考え方を担任の先生が理解しておくことです。社会科の延長線上に総合的な学習の時間があると受け止めただけではうまくいきません。一つ一つの活動が、発展的なのか、関連的なのか、横断的なのかを見極めていかないと、学びの場を仕組むことは困難になるでしょう。