実践事例を見る(36)
 「総合的な学習らんど」のWEB上に紹介している学校のリンク先をたどりました。
学校名 西郷町立大久小学校
所在地 685-0001 島根県隠岐郡西郷町大久宮原18
URL http://fish.miracle.ne.jp/ooku/
電話 Tel:08512-2-1640 Fax:08512-2-1767
学年 不詳
テーマ
海の学習、不詳
カテゴリー 地域、自然体験

 離島の小学校です。全体の計画が公表されていませんので、詳細は不明です。目にとまった実践は、平成12年度「アジの開き体験学習」、最近の実践は紹介されていません。食に関するテーマは、農業体験が中心になっています。ところが、地域性を生かしての漁業体験や魚に関する食材を扱ったものは意外と紹介されることがありません。
 アジやイワシは沿岸漁業の分野で最も身近な魚種です。山陰に限らず、全国のあちこちで捕られ、食卓に上っています。それだけに、加工される過程を学ぶには絶好の材料だと思います。多くの魚は保冷状態で輸送されることによって、鮮度が保たれ、遠距離の市場にも手軽に送り込まれるようになりました。しかし、昔ながらの保存加工は、数多く引き継がれています。塩蔵、干物、ぬか漬けなどへの加工です。特に、塩蔵、ぬか漬けについては地域の特性を生かした技術が引き継がれています。静岡の「くさや」、京都の「へしこ」などは地域限定の方法です。
 私が注目したのは、保存方法ではなく、加工のために生きていた魚をさばくという行いです。命を食べると言いながら、動物性タンパク源については直接食べる人がほとんど加工しなくなりました。そうした現状の中で、魚の加工は是非とも取り組んでみたい体験学習の一つです。切り身しか見たことがないという子どもたちも多いはずです。
 牛や豚などは法の規制があって、簡単に手を出せません。鶏ぐらいならと数年前に取り組んだ先生は、騒動に巻き込まれてしまいました。しかし、魚については、命を絶って加工することに障壁となるものがほとんどないと思います。食材としての魚は、愛玩されながら、飼育するということがありませんから、好都合なわけです。
 魚をさばくのは、単に干物にしやすくするための作業ではありません。内臓は早く腐敗が進むことを生活の知恵として知っているからこそ、取り除くのです。ところが、イワシやカレイなど、内臓ごと乾燥させてしまうものもあります。カレイは腐敗に影響しにくい種類ですし、イワシは旨味を残したいところから塩を適度に使っています。
 魚をさばくことによって、もう一つの学びが見いだせます。取り出した内臓の役目や骨の構造、身の付き方など理科の分野で学ぶことができます。以前の教科書には、魚の解剖や鶏の孵化などが取り上げられていましたが、ことごとく消え去っています。命について学ぶためには、命の仕組みを知り、人間と他の動物の共通点を学んでいくことで、命の不思議さに迫っていくことができると私は考えています。

 魚の干物を作るにあたって、地域の特性がからむことを付記しておきます。魚をさばけば中山間地でも取り組めるかというと、残念ながらうまくいきませんでした。まず、海の近くでは絶え間なく潮風が吹くというよさがあり、干物を作るのに適しています。中山間地では、乾燥を促すほどの風が常に期待できないということです。もう一つの条件は、海水です。魚の加工に当たっては、水道水でなく、海水を使うよさを地元の人に教えられました。海水で洗うことで、適度の塩加減がつき、身が締まるという効果があるそうです。
 以上の二点を工夫すれば、不可能ではないということです。ただし、我が家では、もう一つの対策が必要でした。乾燥中の魚は野良猫の標的になりました。