実践事例を見る(32)
 「総合的な学習らんど」のWEB上に紹介している学校のリンク先をたどりました。
学校名 香住町立香住小学校
所在地 〒669-6544 兵庫県城崎郡香住町香住1595-9
URL http://www2.nkansai.ne.jp/sch/kasumi-es/index.htm
電話 TEL 0796-36-0002 FAX 0796-36-0650
学年 6学年
テーマ
香住の自慢
カテゴリー 地域

 兵庫県では中学校で職場体験学習が行われていることをご存じの先生は多いと思います。進路指導につなげた取り組みとして全国に広く知れ渡り、同じような取り組みが広まっています。総合的な学習の時間に位置づけているところも多いようです。一方、小学校では長期宿泊体験学習を行っているところが多いです。これも総合的な学習の時間に位置づけているようです。長期といっても5泊6日ぐらいの日程です。長期宿泊体験については既に取り上げましたので、ここでは低迷しやすく、一過性の取り組みに陥りやすい地域素材の扱いを紹介したいと思います。
 香住小は以下に引用したような地域素材を6年生が調べたことのまとめ、問題点・苦労・悩み、未来に対するアイデアという項目でWEBページに公開しています。

漁業(カニ) 水産加工 梨 大乗寺 三番叟・キリン獅子 余部鉄橋 酒 山陰海岸国立公園 酢・醤油 遺跡

 問題点の一つ目。いつの取り組みなのか明示されていませんから、憶測です。1年だけの取り組みなのか、何年かの積み重ねで増えたのか不明ですが、継続的な追究にはなっていないと思います。3年生の社会科の延長から組み立てたとき、地域素材を調べていく中で子どもたちが見つけた問題点をきちんと課題にまで組み立て直す作業をしておくと追究することが広がります。
 例えば、漁業のページの問題点は次のように書かれています。

・最近漁師になる人が減ってきて困っている。15歳〜39歳の人より40歳〜60歳以上の人の方が多く、83%をしめている。もっと若い人が増えてほしい。
・カニの捕れる量が減っている。
・日韓漁業暫定水域の問題がある。


そして、未来に対するアイデアは次の通りです。

・まずは海をきれいにしないとおいしいカニが、おいしくないカニになってしまうので、海をきれいにする。
・カニの量が減ってきているので、少しの間捕る量をひかえめにするとカニが増えると思う。
・カニを人工的にふかさせる施設を大きくする。
・香住を有名にする。
・品種改良して新しいカニを作る。
・イベントをいろいろなところで開く。
・香住をきれいに、楽しく、元気にする。
・漁師を増やすため一緒に船に乗ってどうやったら魚を捕ることができるかなどを調べたり、漁師になったら大変だけど、楽しいこともあると言うことを伝える。


 子どもたちがまとめたこれらの問題点や提案をどのように次につなげるか、先生が追究のためのヒントを用意する必要があります。
・海をきれいにするには自分たちでどんなことができるか。
・カニ漁の漁をする期間と水揚げ量はどう変化してきたのだろうか。
・栽培漁業の分野でマツバガニについてはどれくらい研究されているのだろうか。
・香住のカニはどのような場で宣伝され、水揚げされたカニはどこに行くのだろうか。
・漁師さんの苦労や工夫はどうなっているのだろうか。
・どうして後継者が増えないのだろうか。
・ベニ
ズワイガニはどうしてマツバガニほど有名にならないのだろうか。
 少なくとも地域の中にカニ漁をしている方がいれば聞き取りは可能ですし、漁協も情報源になります。栽培漁業センターは日本海沿岸にいくつか設置されていますから調べることは可能です。また、大学の研究機関でマツバガニの生態や増殖の仕組みを研究しているところもあります。
 地域の願いとしてマツバガニにかかわる人々がどんな動きをし、どんなことを考えているかは人とかかわることで明らかになっていきます。地域のことは地域に学ぶということです。

 問題点の二つ目。地域のとらえ方を学区内に限定してしまうと間違いを起こしてしまいます。香住にしかないものと香住にもあるものが混在していると、人との関わりをどこまで広げられるかという発想が曖昧になってしまいます。その曖昧さが、子どもたちの調べ学習の結果に端的に表れてしまいます。漁業(カニ)や梨、三番そう、麒麟獅子舞、山陰海岸国立公園はかなり広範囲の地域になります。ということは、香住での特徴と他の地域での特徴をつかみながら、共通点や相違点に着目させることで、広がりを持たせることができます。逆に、大乗寺や余部鉄橋は香住に限定されるものですから、一定程度追究すると材料がなくなることが予想されます。
 地域素材を一過性のものにしてしまわないために、先生方はぜひ子どもとともに地域に学ぶ姿勢を持ち続け、子どもとともに学んでほしいと思います。