未だに総合が・・・(3)
 総合的な学習の時間が体験や活動をするだけに終わった先生方は、未だに総合が・・・、とつぶやいているのではないかと心配します。前回までは、総括的にものごとをとらえていく力が、総合的な学習を進めるうえで欠かせないことを主張してきました。しかし、もう一つ飛び越えなければならないハードルがあると思います。
 実践報告を読んでいて、テーマはそこそこの広がりが出てきそうな内容なのに、子どもが学んで獲得したものが出てこないのです。なぜ、冒頭に申し上げたような結果に終わってしまうのか、思いを巡らせてみました。
 簡潔に指摘するならば、創造力がなさ過ぎるということにつきます。何もユニークな独創的なことを考え出して実践しましょうというのではありません。前にも申し上げましたが、創造力がないということは学力が低いということに直結します。○○ができるという学力だけでは太刀打ちできませんし、○○を知っているという学力だけでも同様です。
 そこで、なぜ創造力が乏しくなっているのかを考えてみると、行きつくところは一つしかありません。学習の過程が示されていない教材を扱った経験がないのではないかと思うのです。教科書はもちろん、道徳の教材に至るまで、この素材に対してはこんな流れをつけて指導してくださいという親切な書き込みがしてあります。どんな展開にしたらうまくいくだろうかと考える余地があるはずなのに、安易に頼っていると思うのです。
 マニュアル化された手引きは、学習を創造していくうえで助けにもなりますし、妨げにもなります。教育の現場は同質のものを製造するところではありません。学ぶ側も学ばせる側も個性や能力が異なります。なのに、全国一律の手引き書で同じことを話していたのでは成果が上がらないだろうとだれでも判断できるはずです。工夫する余地がたくさんあるからこそ、教材研究をおろそかにしてはいけませんと言われ続けたはずです。先生自身がこれまで工夫してきたならば、学びの創造はそこに培われています。未だに総合が・・・とつぶやく先生と違うものが、そこにあたります。
 では、どうしたら手に入れることができるでしょうか。と私が手引きすることは、先生自身が創造すべきところを安易に導いてしまうことになります。言えることは、実践あるのみです。一つでも二つでも、週に一回でも、とにかく自分で作った手引きで授業実践をしていただきたいと思います。欲を言えば、教科書教材にない、学習素材を使ってほしいと思います。
 そうですね。ミカン一個、リンゴ一個で45分、あるいは50分の授業を組み立てて、子どもにおもしろかったと言わせる授業を実践してみてほしいと思います。そのためには、前回、前々回でお話ししました総括的にものごとを見る方法がきっと役に立つと思います。というのは、ミカンやリンゴについて先生がどれほどの知的情報を持っているかということと大きく関係するからです。種類、産地、生態、起源、まつわる話題、登場する物語、食べ方、調理方法、保存方法、栄養、効能、旬・・・もうこれだけで一冊の本ができそうです。ぜひとも先生自身が作った手引きで実践してください。
 学びを創造するにはどうしたらよいか。実践を通して先生が学び取れば、総合的な学習が今年度は変わったと自信を持っていただけるでしょう。