総合での個別支援
 文科省がまとめた意識調査の中で、総合的な学習が嫌いな傾向にある小中学生の理由として「いろんな活動をするが、自分のやりたいことがよく分からない。」というのがあります。8.8%の小学生(2408人の約4.4%)、22%の中学生(2296人の約9.7%)の一番の理由ということです。
 「自分のやりたいことが分からない。」という言葉の中にどんな思いが含まれているか想像することで、総合的な学習の時間における個別支援のあり方を見当してみたいと思います。では、どんなことが考えられるか思いつくままにあげます。
・提示された活動に興味関心がわかない。
・したいことを探すのに価値観を見いだせない。
・何のために活動しているのかさえ分からない。
・経験が不足しているので、追求したい内容が思いつかない。
・テーマが限定されているので、したいことが見つからない。
・受け身で活動に参加しているので、活動が終わると自己完結してしまう。
・問題意識を感じることが何もない。
・先生の提案するヒントが、ほとんど自分のしたいことにつながらない。
・興味関心はあっても、何をしたらよいか分からない。
・調べたいことはあるが、見通しが立たないので、何をしたらよいか分からない。
 理由になる事柄は様々に見えますが、整理してみれば、2通りの思いがあることになります。
○興味関心がわかない。
○方法が分からない。
この2つです。前者の場合は、テーマや活動そのものに強い規制がかかっているために、すべての子どもの意識を網羅し切れていないということになります。経験や体験が極度に少なく、知的水準も高くない子どもであれば、選択肢の幅を広げることで「やってみようか。」ということになるかもしれません。
 10人中1人だけ飛びつかないときに、新たな興味関心の持てることをなげかけることができなければ、9人の動きに追随させる助言で逃げ切ろうとしやすいでしょう。たった1人のために特別に用意したなげかけを示すことで1人の子どもは先生の力によって救われます。このことは、総合的な学習だけに限りません。国語や算数であっても、たった1人のために手だてを用意することが、個別支援のめざすところです。この考え方は、結果的に学級全体の水準を最も効果的に上げる方法となります。できる子ども、できそうな子どもは、極力、自力解決の道に進ませることが望ましく、支援という名目で言葉をかけることは邪魔になってしまいます。
 後者については、学び方が身に付いていないといえます。問題意識さえ見いだせないのですから、友達のやっていることを見させて、「興味がわくかなあ?」と誘っても意味がありません。問題を見つけているようで、見通しが持てないのは、まだ問題が自分のものになっていないことが原因です。つまり、入り口だけ形を整えても学び方は育っていないことになります。即効性のある個別支援が最も難しい場合です。日ごろの教科の学習で、問題解決学習の手法を多く取り入れていかないと素地はできません。中学生の方が多くなる原因は、日ごろの授業が問題解決型でない場合が多いからだと考えられます。
 しかし、総合的な学習を進めている以上、学び方のスキルの成果を待っていたのでは学習が停滞してしまいます。まずは、活動や体験を振り返って問題づくりに励み、より広がりのある問題提示をすることです。学級の中に30人いれば30通り以上の問題を作るぐらいの意気込みが必要です。もちろん先生も問題づくりに参加します。
 以上のように、総合的な学習における個別支援も教科と同じことです。分からない子どもこそ、学級の中の学びの宝です。