総合と先生の自信
 10月3日付の日本教育新聞を見て、やっぱりという感をあらためて確認しました。日本教育社会学会で報告された大阪大学大学院、秦政春教授らの調査です。福岡県下の小中1000人余りの結果とはいえ、指導力を磨けば総合的な学習の実践は着実に進むと考えている私の主張にそうものです。
 報告の要点は、授業に自信のある先生が総合的な学習の実施を肯定的に見ている傾向があるということです。授業がうまい、同僚に見られてもよい、授業に苦痛を感じないということに対して「とても」、「やや」の反応を示した先生は小学校で7割にのぼり、この先生方は総合的な学習を肯定的に見ていると解説されています。
 当たり前といえば当たり前の結果です。授業を公開してもよいと考える先生方は、子どもを掌握する学級経営に余裕があるでしょう。教科書にない教材を工夫して、授業に取り入れることも実践しているでしょう。子どもに対する支援のための手だても豊富にあるでしょう。逆に、授業を公開したくない先生方は、総合的な学習を展開するときに求められる基礎的な指導力に不安を抱いているか、先生自身の目標を高めに持ちまだまだ到達できていないと謙虚に考えているか、どちらかになるでしょう。ただ、自分は授業がうまいと思っていても、他者の客観的な評価になるとそれほどでもないという実態が隠れています。
 総合的な学習を実践するためには、示されたこと、しなければならないことを企画する必要があります。一つのテーマをもとに教科書を作ることができるくらいの企画力、創造力が要求されています。今後、ますます次に示すような傾向が強い先生方に対する風当たりは強くなってきます。

・工夫することが苦手
・好奇心が強くない
・必要最低限のことをこなすのに精一杯
・分担以外の仕事に介入したくない
・自分が苦手なところはやる気のある先生に頼みたい
・学級が危機的な事態になると責任転嫁の考えに陥る
・したくないことはやる気のある先生に任せる
・指導がうまくいかない理由を安易に子どもに求める
・手だてが少ないので同じことを繰り返す
・簡潔で分かりやすい説明が苦手
・教科書会社の解説書だけで授業を描く
・吟味しないで市販プリント集を手当たり次第に使う
・問題の多い学級は担任したくない
・生徒指導や特活がやりにくい
・学校全体を動かす担当は持ちたくない

 風当たりを弱くするためには、上のような否定的な事態を少しずつ肯定的に変えていくしかありません。学校の先生の仕事は実践研究の積み上げに支えられています。学問研究の世界とは異なります。従って、必ず年齢を重ねるごとに実践研究の積み上げが比例するとは限らない現実があります。意欲のある先生が抜け落ちた部分をカバーする、否定的にとらえていても職場の中に居場所がある、やってもやらなくても給料に差がない、このような学校という職場の特殊性がいつまでも維持できるとは思えません。子どもたちに要求することと、先生自身の生き方が一致しなくなると学級を掌握することも難しくなります。つまり、世間でいう学級崩壊を招くわけです。
 今回の報告で誤解を招かないようにしておきたいことがあります。総合的な学習に対して肯定的だからといって、総合的な学習が総合的な学習になっているとは断定できないということです。謙虚な姿勢で学ぶ値打ちがある総合的な学習を創造していかなければなりません。