学びの素材案「エネルギー」
 エネルギー、環境のテーマでシミュレーションできそうな企画を提案してみたいと思います。
 教室に冷房をという話題が1年前ぐらいに突然浮上しました。大気汚染や騒音の対策の結果、冷房が整備されている学校はあるでしょうが、単に快適な環境だけを目的に整備されているところはまれにしかないと思います。私が知っている県内の公立の小学校は1校だけです。実現していくかどうかは自治体の財政によりますが、安易に冷房をつけましたという話に終わらせたくないところです。ただ、冷房を取り付けて快適な学習環境を整えることにはあまり賛成できません。人間の自然の暑さに適応する力を低下させるのではないかと心配するからです。といいながら、必要なときだけ冷房が入ると快適この上ないと思うこともあります。
 教室の冷房を授業中、晴天の暑いときに限るならば商用電力に依存しなくても、自然エネルギーに依存することで、環境負荷が軽減できないかという問題です。夜間の冷房は必要ないわけですし、曇りや雨の日は自然換気で我慢することが可能です。一般家庭や事業所の冷房と違って稼働率が低いことから、どんな方法が設備経費、維持費や環境負荷によい影響を与えるか検討して、問題解決に当たります。さらに、日中の最も暑い時間帯にだけ発電して冷房すればいいわけですから、営利を本業としない学校では、投資経費をいかに回収できるか想定しなければなりません。商用電力を使えば投資経費を回収することはできません。
 そこで、一番に思いつくのが太陽光発電です。風力発電は不安定で、冷房機を回す電力を得ようと思えば、かなり高くつきますから、シミュレーションは複雑になります。発電の設備投資を回収しようと思えば、学校が休みの時に買電するしか方法はありません。
 もう一つの問題は、蓄電をするのがいいのか、熱変換効率が落ちても蓄熱がいいのかということです。蓄電のための効率的で低価格の設備は適当な選択肢がありません。テレビを見るぐらいなら実現できるとしても、2〜3kwの冷房機を何台も動かす蓄電はかなり大仕掛けになるでしょう。それよりも、製氷することで冷房熱源を蓄熱する方がよさそうです。冷媒に何を使うかは環境負荷にも関係があります。氷を冷媒に使っても、氷を作るための冷媒ガスは必要ですから、直接この問題を解決したことにはなりません。ただ、製氷のために電力を使えば、買電にまわすだけの余裕があるかどうかは試算してみないと分かりません。
 環境問題、エネルギー問題を追求するとき、消費と生産のサイクルを考えて創造しないと、必ず破綻してしまいます。水力発電や太陽光発電は、地球や太陽が存在する限りサイクルは続きます。火力発電や原子力発電は有限の生産と消費であることは否定できません。それだけに、夢みたいな話だ、現実的でない、などと創造力をつぶすようでは、総合的な学習はいつまで経っても実現しません。電力事情に関心を持つことで、やがては停電という危機に対応できるくらしを創造していけると考えられます。その体験は簡単にできます。電気を自ら止めるだけです。そこで、電気のありがたみをしみじみと感じるだけで終わるか、さて電気がなければどうしようかと考えるかの違いが分かれ道となるでしょう。