興味と関心と意欲
 興味、関心、意欲は、15年前に知識・理解に偏重した評価の矛先を変えるために、順番が入れ代わってトップバッターになったいきさつがあります。たかが順番が変わっただけというにとどまらず、波紋がおこったできごとでした。生活科や総合的な学習では、学習そのものを組み立てるうえで、欠かせない観点です。興味や関心がないことを子どもたちにやらせるなら、ひたすら先生が引っ張り回すしかありません。子どもたちの意識が「やってみたい。」というところに向くために様々な手だてがこうじられてきたと思います。
 私は、個別化を図る指導法の研究の中で、生活科や総合的な学習にも通用する手法を確立することができました。一人ひとりの子どもがやってみたいことにのめり込んでいくには、簡単明瞭な条件しかありません。
 ○ 身近な素材であること。
 ○ 具体的な場面を示すこと。
 ○ 言葉だけでなく、モノを示すこと。
この三っつの条件を備えている学習素材ならば、どんな教科であっても、必ず子どもたちは興味、関心を示し、意欲的に学習するというものです。身近でないものを持ってくると、説明を必要とし、説明が理解できないと興味や関心を示すことができません。架空の場面設定をすると、子どもたちは想像をはたらかせて、言葉から場面をイメージしなければならず、能力差によって困難になる子どもたちが増えます。言葉だけで学習素材を示すと、言葉を使いこなすことが苦手だったり、読みとりや聞き取りが苦手だったりする子どもたちにとっては集中することができません。
 絵や写真でもかなり具体的に示せるとお考えの先生もおられると思いますが、子どもたちの抽象能力を過信しないことです。極端な例かもしれませんが、本物のケーキと絵に描いたケーキを示したとき、子どもたちの集中力はどちらが大きいか、試すまでもないでしょう。
 以上のような条件を整えて学習素材を示したとき、先生が陥りやすいことがあります。適切な学習素材を示しているわけですから、くどくどと解説をする必要はないはずです。ところが本当に伝わっているのだろうかという不安は、先生のおしゃべりを増やすことになります。下手にくどい補足説明は行わないことです。そうしないと、用意した学習素材が子どもの興味。関心、意欲を引き出したかどうか評価できなくなります。まずいものは、どんなに補足してもまずいものに変わりはないのです。いいものは見せるだけで、引きつける力を持っています。
 これは、授業の中で資料を示すときにも言えることです。よい資料は多様に読みとるよさを持っているのですから、先生が自慢げに解説したら、資料のよさが台無しなってしまいます。例えば、オーストラリアで使われている世界地図や星座早見盤の現物を見せて、先生が解説をしたら、子どもたちが読みとることを阻んでしまいます。発問だけでいいのです。
 興味、関心、意欲で気をつけたいことは、持てない理由を子どものせいにしないことです。用意した学習素材に興味、関心、意欲が持てないのは、先生の実態把握がまずいか、学習素材そのものがまずいかのどちらかなのです。決して、子どもの感性が鈍いなどと言ってはいけません。例えば、日常生活の中で売れ筋の商品は、買い手の興味、関心を引きつけ、購買意欲をそそるようにできています。商品が売れないのは、消費者に見る目がないなどとは言えないことです。