総合的な学習と外部講師
 外部講師を依頼することなく、すべて自前で総合的な学習を展開している先生も多いと思います。子どもとともに学ぶならば問題となることは何もありません。
 外部講師、ゲストティーチャー、地域の人材、専門家・・・、呼び方は様々ですが、学校外から専門的知識を備えている講師を招くことはかなりの学校で普通に行われていると思います。以前のコラムで、地域の人材活用について書きました。外部講師を使う以上、ティームティーチングの指導法を身につけておくことは大切なことです。持ち時間と内容だけを知らせて、下駄を預けるような使い方では、手抜きといわれても仕方ありません。目的をはっきりさせて授業時間の中に位置づけなければ、外部講師を使ったという形だけしか残らない場合が多いでしょう。少なくとも、先生は教えるプロであって、すべての学習内容について専門的知識に長けていないというだけのことです。外部講師と学校の先生の大きな違いは教えるプロか否かというだけのことです。
 
かつて大学の恩師がよく話していたことがあります。残念ながら現在は亡くなられている方です。「小学校の先生は幅広い知識を持っていて、大人が当たり前と思っていることを上手に教えられる。教えることについては、小学校の先生が一番上手です。大学の講義は、まさに講義であって、授業とはとてもいえないことをしている。専門的知識や考え方を話し、解説するだけだから、学ぶ気持ちのない学生や興味のない学生はきっと退屈だろうな。」このような趣旨の話でした。
 先生に専門的知識がないので、外部講師を依頼するというのは確かですが、一歩おし進めて、授業の中で必要性があるから依頼するという考えが求められます。総合的な学習に限らず、様々な教科でも活用される外部講師です。ぜひとも先生の代用という考えだけは避けて欲しいところです。
 天候がよくなかったために実現しませんでしたが、中学校理科の星座の学習に外部講師として依頼されたことがあります。教科書のコピー、指導して欲しい学習内容の要点などを渡されて引き受けたことがあります。外部講師は何も地域の人材だけに限りません。校種の違うところに専門家がいたり、場合によっては校内に専門家がいたりします。教えるプロの中に外部講師がいるならば、学習のどの部分で役割を担うのかは打ち合わせがしやすいというメリットもあります。先生同士ならば、講師謝礼を考えなくとも時間の調整だけで依頼できる手軽さもあります。ALTを小学校の英語学習に依頼しているのはこのようなとらえ方で実施されていると思います。
 お金の話が出たところで、講師を依頼したときの報酬はいくらぐらいを考えておけばよいでしょうか。講演の講師とは違いますから、世間一般の賃金をもとにすればいいと思います。教えるプロとしての先生が非常勤の場合の時間給は二千数百円です。軽作業の時間給は千円未満です。講座の受講料は営利が含まれていますから、教室を経営している方に依頼すると割高になってしまいます。交通費も含め1〜2時間で2〜3,000円というのが相場になる
でしょう。金額に固執する必要はなく、謝礼の意味を込めれば、物であってもよいわけです。
 くれぐれも先生自身が知らないから、できないから外部講師を頼むのではないということだけは、忘れないでいただきたいと思います。専門家=権威=豊富な知識はかなりの確率で成り立ちますが、専門家=正しいとは言い切れません。