総合的な学習と予算
 総合的な学習に関する予算はいかがでしょうか。教科の備品費、消耗品費は、これまで必要なものがはっきりしていますから、財政に応じて確保されてきたことと思います。総合的な学習の予算が突出するような別枠というのは困難としても、必要な費目のところに上乗せできていれば、予算で四苦八苦することはないと予想します。しかし、本来予算というのは少なくとも半年前に計画を立てて実績をもとに算出します。必要なときに必要なお金をという丼勘定は通用しません。家庭で考えると、小遣い的な予算では対応できない問題点をはらんでいます。つまり、行き当たりばったりで、あれが欲しい、これが欲しいといいながら、なかなか思い通りに買い物をしたり、人を頼んだりできない状況があるのではないかと察します。
 まず、公費はどのようなシステムで予算化されてるか知っておく必要があります。市区町村で多少の違いはあっても、基本的な考え方に変わりはありません。国の予算といえども同じです。大ざっぱに見れば恒常的に必要な需用費などと、何かをするために必要な事業費とに分かれます。いずれも必要を満たすだけの実績がもとになっていますから、予算編成のときは積算基礎を提示しなければなりません。一方でいざというときのための予算が補正予算としてあります。家庭でいえば、貯蓄あるいはへそくりという類のものです。
 何にどれだけのお金がいるかを示さなければ予算要求はできませんから、実績のないところでは綿密な見積もりが必要になることがお分かりいただけると思います。しかも。当年度ではなく、前年度の予算編成時期に用意しなければなりません。ところが、総合的な学習の展開は半年前から予定を立てるわけにはいきません。当年度になってみないと必要なものが計上できないということが多いでしょう。これではいつまでたっても予算が組めず、実践を拡大していくことができないことになります。こんなことであきらめてはいけません。
 予算システムは都合よくできているもので、ある程度、行き当たりばったりでも可能な方法が残されています。国が実施している補助事業と同じ考えで市区町村単独で予算化すれば解決します。何も軍資金がなくとも事業をするために必要な経費として補助申請できるように働きかければいいわけです。費目に制限はつけられてもたいていの経費には対応できるものです。様々な材料を購入する消耗品費、謝礼や接待に要する食料費、講師を依頼したときの報酬費、講師の旅費、物を送るための通信運搬補費、移動するための手数料、保険料等の委託費など必要に応じて支出し、年度末に実績報告を作成して完了するというものです。余れば返すこともできますし、場合によっては繰り越すこともできるはずです。
 多くの補助事業に基準となる金額は設定されていませんから、第一段階としての補助申請で確実に消化できる積算基礎を予測し、二年目から肉付けすることになります。過小の積算をすると動きがとりにくくなり、過大に積算すると返納が多くなり、いい加減な予算執行という印象を与えてしまいますから、慎重な検討をすることは当然です。
 このようにして当初予算と補助事業費を使い分けながら、予算確保のための実績を作っていくことで、総合的な学習にかかわる経費を支払う裏付けがとれます。何もしなければ予算はいらないし、予算があれば総合的な学習が必ず確実に展開するというものでもありません。基本線は一つです。何かをしようと思うとお金がいるので、予算を要求するだけのことです。教科の備品費など一年に一回しか使わないものであっても教材として必要だからという理由だけで購入されます。ところがせっかく購入しても使われないものがあるのも現実です。財政が厳しいときだけに確実な予算的裏付けとなる実践をしていくことは説得力になります。授業をするために必要な経費は教科だけに限らず予算確保してきた経緯を十分理解して、新規事業を計画することです。もちろん、必要な経費がすでに公費で執行されているならば、今回は蛇足になりました。