総合的な学習と学習環境
 総合的な学習は、実践を進めれば進めるほど資料が山積していきます。集めた資料を山積みしておくだけならば、それはもう資料ではなくゴミの山ではないかと心配します。そこで、学習環境を整備していくという先生自身の課題が生じてきます。
 子どもたちが作成したワークシート、自己評価カード、構想メモ、発表原稿、そして、子どもたちが収集した資料の数々は年とともに確実に増えていきます。ポートフォリオの手法を取り入れている先生ならば、これらの紙類などはファイルに整理させているでしょう。子どもたちが学んでいった足跡がファイリングされていないと形成的な評価をしていくことは困難ですから、よくご存じのはずです。ささいなメモであってもひらめきがつづられたものや調べたいことがつづられたものは、子どもたちの思考の流れを表すものですから、大事にファイリングさせておきたいものです。2年目、3年目と積み重ねるうちに、振り返る材料にもなっていきます。ぜひ、子どもたち一人ひとりがファイルにつづっていく整理の仕方を取り入れてほしいと考えています。
 つぎに、共用する学習環境の整備があります。生活科が始まったころは、廃材を集めたボックスやカード、色画用紙、文房具類など自由に使える素材を整理するボックスが競うようにして整えられた経緯を覚えている先生もおられるのではないかと思います。生活科と違って、総合的な学習の時間には調べるための資料やパソコンなど、整えておきたい素材が増えてきたと思います。これらを整理するためには、できあいのコンテナボックスも使えるでしょうが、容量に余裕のあるプリントケースや収納棚が適していると思われます。もちろん移動が簡単に行えるようにキャスターがついていると使い勝手は申し分ありません。仕切られた普通教室では限られた空間を上手に使わなければなりませんが、空き教室やオープンスペースのある学校では、整理することによって、共用しやすくなるでしょう。
 資料を入れるものと入れる中身がそろえば、あとは整理の方法だけ一定の約束に従って行うだけです。例えば、「環境」というような大きな枠組みで整理したのでは整理したことになりません。どちらかというとキーワードを作ってはめ込む方が、子どもも先生も分かりやすいと思います。「水」「リサイクル」「温暖化」「ゴミ」「魚」「野鳥」など身近にピンとくる言葉で分類することで、使いやすくなります。
 一番問題になるのはインターネット上の資料です。必要なところだけをプリントアウトして子ども自身が持っておく分には問題はないのですが、検索を助けるための素材は用意していかなければなりません。パソコンの台数に余裕があれば、キーワードごとにお気に入り、またはブックマークとして寄せ集めていけば確実です。しかし、増えるに従って、寄せ集めたものを複数の子どもたちが利用しようと思うと不便になってきます。URLのコピ−&ペーストができるようになれば、テキストファイルのメモ帳に整理して、フロッピーを複数用意することで、同時に別々のパソコンで調べていくことができます。調べるためのURL集をネット上のリンク集に求める先生もおられますが、丹念に推奨できるサイトを自分の目で確かめておくことは、子どもとともに学ぶ姿勢として大事な部分です。図書が書名だけでは所期の目的を果たすかどうか判断しにくいのと似ています。目次、サイトマップを閲覧するだけでも判断材料は飛躍的に増えると思います。
 掲示物の役目はどうなっているでしょうか。前年のまとめをでかでかと掲示したり、写真ニュースなど外部からの掲示物を貼り付けたりしていると「やってます」という雰囲気を作るには適しています。しかし、掲示物の果たす役目からすると精選して貼り出す必要はあるでしょう。問題提起をアピールするポスター、まとめ方の手本になるもの、常に意識させておきたいキーワードなど子供に目を向けさせたいものを掲示することで、先生の意図は伝わるようになると思います。
 学習環境を整えることは教室経営の一環として長年培われてきました。新たな教科や時間の登場で昔ながらのものを残しておく反面、思い切って必要に迫られるものを取り入れていく柔軟性もつきつけられています。