総合的な学習2年目
 年々、学校現場で危惧するようになったことが一つあります。総合的な学習の時間にその危惧が影響しないことを願っています。
 パソコンが浸透したことによる弊害です。パーソナルワープロ時代は機種による文書フォーマットの違いがデータのやりとりを面倒にしていました。やりとりするたびにコンバートする煩わしさがあったわけです。ところがパソコンに取って代わるようになって、文書の互換性は飛躍的によくなりました。学校現場で使われている文書作成のアプリケーションは「一太郎」または「ワード」に限定されてしまったことによります。「ページメーカー」に至ってはマイナーな存在で、印刷業界専用のアプリケーションと思いこむぐらいです。これを読んでいる方でさえ、どこの会社のソフト?と思われる方も多いでしょう。
 以上のような現実が、安易に前年の文書の日付と名前を書き換えて繰り返し登場する原因となりました。つまり、白紙の状態から自分の考えを練って企画なり、計画を出すことが少なくなったのではないでしょうか。表向き無難にことは運ぶでしょうが、何か変だと思いませんか。手書きの時代には、文書の一部を差し替えて横取りすることは、手抜きというより、恥ずべきことでした。時間はかかっても前年を参考にしながら自分の手で新たなものを作り出すことが当たり前でした。ですから、差し替えて作ってよい文書と自分の企画を打ち出す文書は使い分けていたと思います。
 前年文書のデータがあると確かに効率的に文書を作ることができます。しかし、一つ間違うと単にコピーという結果に終わってしまいます。効率的にできる部分と責任を持って自分が創り出す部分があることをわきまえて仕事をしなければなりません。手書きであれば、複数の著作者が見えてきますが、活字となった文書を一部書き換えられると複数の著作者が関わったことは容易に見抜けなくなります。コピー元の著作者になりすますことができたり、人のものを借りて自分のものにしてしまうこともたやすいわけです。
 総合的な学習の時間では、特にこのことを意識して実践してほしいのです。学年は同じであっても子どもたちは変わります。学びたい中身は変わります。前年を踏襲することはあり得ません。もし、踏襲しているとしたら、先生が主導権を握って、学習の中身を押しつけていることになります。これまでにもしつこく述べてきましたが、借り物の実践では子どもは育たないのです。先生と子どもが相互に働きかけあって創出すべき学びを目指してほしいのです。
 まもなく今年一年間の方向を見いだすためのオリエンテーションが始まっていく時期と思います。とっておきの投げかける学習素材を用意して、学びの網の目を描くことを期待します。余裕のある方は、教科学習の中身と関連づける作業も進めていただきたいところです。そうすることによって体系的な学力を保障することが可能になると思います。