進まない負の要因3
 総合的な学習に限りません。ワークシートへの安易な期待が空振りとなり、実践に結びつかないまま終わっている先生はいないはずと願いたいところです。教育技術の法則化や学習の個別化の実践では大量のワークシートが登場し続けています。ワークシートを使うと子どもが飛びついて真剣に取り組む・・・ということはありません。単なる紙切れを生かす方法の方が重要です。
 ノートではなく、なぜワークシートなのか、その必然性をしっかり考えていけば、ワークシートは魔法の紙切れではなく、必要な役割を持っていることが分かると思います。一斉に同じことを同じ量だけするのなら、ワークシートはいりません。ノートやワークブックで十分です。
 ワークシートにする必然性として、
・選ぶことができる。
・個人の進度に合わせてステップアップができる。
・簡単な説明だけで使い方が分かる。
・順番が入れ替えられる。
・指示を減らして、自力解決を促せる。
・書き写す手間が省ける。
などが思いつきます。つまり、ワークシートは個に対応して学習を進めるための手段にすぎません。
 いきなり配ってさあやってみようと声をかけても、慣れていない子どもたちは指示を求める質問に気を取られてしまうおそれがあります。
・ワークシートで何をするのか。
・選び方に約束はあるのか。
・書き方に制限はないか。
・すんだらどうするのか。
・どこまでするのか。
などの子ども自身が判断する材料が示されていなければ、先生は説明の対応に追われてしまいます。ドリル、スキル、反復練習、習熟問題・・・呼び名は様々ですが、習ったことを練習するための学び方を学ばせることがワークシートを生かす最初の土台になります。方法が飲み込めるに従って、指示は少なくなりますから、先生の意図が伝わっているかどうか判断ができるでしょう。学びの全体像を子ども自身が理解しているということが大切なことになります。
 わたし自身が実践してみて思ったことは、「全部できなくてもよい。」「隣同士の子どもが違うシ−トを作業していても気にならない。」というあたりを乗り越えるのが難関です。先生はどうしても説明したがり、全員に同じことをさせたいという先入観がしみついています。用意したものをすべて消化しなくても子どもにとって困ることはありません。不都合と感じる先生が問題なのです。
 ワークシートを上手に使ってきた先生方は、どんな内容にして、どんな進め方をするか、シナリオを用意して作り上げています。単純に他人が作ったものをコピーして使ってもうまくいきません。授業の流れの中でシナリオを作る努力が要求されます。
 以上のような3つの問題点を自らの問題として克服することで、総合的な学習において、個々の子どもたちが異なる内容で取り組んだとしても掌握できますし、個に応じた支援もしやすくなります。うまくいかないと考えている先生は、どの子どもにも一律に同じことを消化させて、同じことができる力を付けたいという意識が背景にあるのではないかと考えます。総括的な指導と評価を進めると同時に、個々の子どもの伸びに対する指導と評価もしていかなければなりません。それが行われているところでは、総合的な学習に限らずワークシートが果たす役割も明らかになっていると思います。
 このようなワークシートの土台を構築しておいてポートフォリオの手法を取り入れていくことは意味があるつながりになるとわたしは考えています。