小遣い
 使い道を説明して小遣いを与えている人は読まないでください。おやつ代として少額を与えている人、もしくは、必要ないと考えている人は一読をおすすめします。
 若年世代のお金にまつわる事件が増えると金銭教育を学校できちんとすべきだという主張が出てきます。金銭教育なんて学校がすることじゃないし、行政がサービスとしてお知らせすることでもないと思っています。子どもたちが使うお金は、家庭に主導権があります。行政や学校が、子どもたちに使い方を教える必然性がありません。お金を稼ぐのも、お金を使うのも、家族の中の営みだからです。
 では、子どもたちに小遣いをどのように与えていけば、効果が大きくなるか考えてみましょう。まず、その都度、必要に応じて買い与える方法は、親が手本を示せるから問題ないでしょうか。子どもの要求を査定し、最終的には親の判断でものを与えることになります。自分で考えて、自分で決めることはしません。単におねだりを続けるだけの関係になってしまいます。挙げ句の果てには、買いものができない子ども、公共交通機関の利用の仕方が分からない子どもになってしまうおそれもあります。
 次に、おやつ程度の小遣いに限定する方法は、決められた期間、予算内で買いものをしますから、お金の使い方を考えることはできます。しかし、落とし穴もあります。おやつ代を小遣いとして渡しているのに、買いもののついでにおやつを買ってしまうようなことがあれば、小遣いの意味はほとんどありません。
 最期に、子どもだけにかかる経費を小遣いにする方法です。おやつ、学用品、衣類、嗜好品など、子どもが必要とするものを自分で判断して買いそろえるのです。これは、買いものの機会が増え、予算内でやりくりすることができる優れた方法です。
 小遣いを与えて自己管理できるのはいつごろが適当なのかという、親の判断材料です。いつでもいいという訳にはいきません。たし算、ひき算、かけ算、わり算の基本を学ぶのは小学校3年生です。この学年が終了した時点で日常のお金の管理は確実にできます。もし、できないとすれば、学習したことが身についていないのです。
 よくある話、ゲーム機や携帯電話を買い与えて困ってしまう方がいますが、たいていの場合、小遣いで訓練せずに、おねだり方式で対応してきたつけが回っているようです。いずれも、ないと生活できないものではありません。安全のために携帯電話を持たせるのだと自分を納得させている方がおられますが、安全は、携帯電話が保障するのではありません。子ども自身の判断と行動が身を守る最大の武器です。与えた以上は、毎月の請求明細から小遣いの支給を減らして対応するしかありません。
 買い与えるのと買うのとでは全く違うのです。子どもは親の手助けなしに自力で携帯電話を買うことができるかどうか試して見るといいでしょう。たぶん、おやつなみにその日のうちに手に入れることのできる子どもはいないのではないかと思います。買い換えではなく、新規購入の場合です。
 たかが小遣い、そんなに重大なことではないとお考えのようでしたら、お金で困ることがあっても切り抜けられませんよ。収入と支出のバランスが崩れたら転落の道に一歩踏み込んでいます。

 小遣いにからんで「かわいい子には旅をさせろ」という言葉を重ねて考えてほしいのです。この言葉は、いつの時代になっても、子どもを鍛え、体験の大切さを身につける最も優れた方法です。買いものでは人を介在させてやりとりできる範囲がかなり減りました。しかし、旅をするためには、多くの人とかかわらないと目的を達成できません。その機会を奪わないように対応すれば、子どもたちは大きく自立できると思います。受験のころから親の対応の仕方には目に余るものが多くなったと感じています。「どうして親がついて行くの?」という光景です。親の出番は身元保証人を要求されたときだけです。必要以上に子どもにつきまとっていると子どもをダメにしてしまいますよ。