対話能力を鍛える子育て
 対話能力。英語でいえばコミュニケーション能力になります。お互いを尊重するための意思の疎通なのですが、話が上手でない私も自分自身の課題になっています。かつて、オーストラリアから視察に来た若者に声をかけられ、口ごもってしまった私に「Are you shy ?」と言われ、お手上げになってしまいました。書くことが苦にならない私は、危機感が乏しいようです。
 対話になっていない状況として、いいたいことだけを言う、どうせ否定されるから言わない、反論が怖いので言わない、上手に話せないので言わない、相手の言いたいことを自分の都合のいいように変えて代弁するなどが考えられます。親子の場合、反応がすぐに返らない子どもだと代弁しやすいようです。
 日常生活の中で対面して、対話する機会が減っているからこそ意図的に親が積極的に場を設定してほしいと思います。買い物をするとき、コンビニやスーパーでは極端に対話が減ります。それよりも寄り合い所帯の市場は、すてきな場所になります。対話しないと買い物ができないのですから、おもしろいです。ファーストフード店は対話がありそうで、実はマニュアル化された対面販売ですから、期待できません。金融機関もATMの前でボタン操作するだけですから、自動販売機と同じです。窓口で用を足す方が理にかなっています。が、事務的なやりとりが多くなるでしょう。どっこい銀行などは、機械処理のほうが手数料安いですよとハッパをかけるから困ったもんです。
 子どもの場合、最初からうまくいきません。時間もかかります。待ちきれないもどかしさをしばらく我慢しなくては実現しないことと思います。どのように話せばよいかは、決まり文句のようにたたき込む必要はありません。対話を積み重ねていく中で身につくものです。きっかけづくりは、よく言われているようにあいさつから始まるでしょう。「おはよう」と言われれば、「おはよう」と返し、「ありがとう」と言われれは、「どういたしまして」と返していく中で対話のきっかけは生まれます。
 うまくいかない原因は、傍観者的に対話を聞いているとよく分かります。「どれにする?」、「何をしたいの?」、「どう思うの?」などと問いかけておきながら、「これがいいよね」、「眠たいんだよね」、「おもしろいよね」と自問自答していることが多いのではないでしょうか。相手とかみ合う話をしていくためには、思いを言えるだけでなく、相手の思いを理解する力がいります。親子関係の中で、1人の意志を持った人間として認める関係を作っていくなら、将来的に安心できるでしょう。