比較三原則
 ?人と比べない
 兄弟と比べたり、同級生と比べたりすることで結果的に競争心をかき立てるような期待はできません。あわよくば劣っている自分を指摘されて発憤するほど単純に受け止める子どもはいないと思うのです。いやいやそんなことはない、比べることで猛然とがんばりだしたという話は多くは聞けないでしょう。逆に人よりも優位に立っている場合は、自尊心が高まり、ひいては高慢にさえなってしまうことがあります。ところが、優位な位置が続かない場合、転落したときのダメージは大きくなるでしょう。優劣の順位は永遠不滅のものでないだけにどっちに転んでも当の本人にとっては大きなプレッシャーとなり続けます。大きな効果は期待できないというのが結論です。ただし、自発的な「あいつにだけは負けたくない」というライバル意識は、自分を成長させるのに役に立つ場合もあります。
 ?変化を比べる
 日々子どもは活動し、体験し、試行錯誤し、勉強していきます。その中で丹念にできるようになったこと、上手になったことなどを見つけだして励ますことは心強いものです。体重が増えたり、身長が伸びたりするのも変化を比べています。そのことを自他共に認め、喜ぶことはこの上ない満足感が得られるでしょう。個人を尊重することになりますから、小さな変化をも見逃さないことです。そうしないと「ちっとも大きくならないねえ」「ちっとも上手にならないねえ」という決定的なダメージを与えることになってしまいます。
 ?標準と比べない
 使い方をまちがったために最悪の結果を招き、使わないようになったのが偏差値です。これも一種の標準値と比較した結果ですから、それに付随する価値と混同してはいけないものなのです。偏差値と学校がセットになったとき、おかしな価値基準がでっち上げられてしまいました。そのほかに平均値という標準もあります。平均に近ければみんなとだいたい同じだから安心できるかなと安らぎを感じてしまう場合です。横並び意識はこんなところから形作られてきたはずです。
 いずれにしても、比較していく中で価値をひ弱なものにしていますから、崩壊したり、行き詰まったりすることもたやすくなります。それよりも、人間にとっての絶対的な価値を追求する子育てをしないと夢は広がらないなあと思っています。