群れのすすめ
 子どもを取り巻く状況の中で決定的に欠けているのは、「子どもがむらがる」ということです。都会でも、村でも大きな違いはありません。原因となるものはいろいろ取りざたされています。子どもが少ない。安心して遊べる場がない。家の中で過ごすことが多くなった。遊び道具が様変わりした。親が孤立している。核家族が多くなった。人間関係が希薄になった。自己中心的な考えの人が増えた。それらの原因がどうしたのっていう感じはないですか。本当に「子どもがむらがる」ことが子育てのうえで大事なことなんだと誰もが信じて疑わなかったら、こんなことにはなっていないはずです。マイナス思考の結果、失うものは大きかったのではないかと考えます。
 保育園や幼稚園では1日のかなりの時間むらがっていることができます。ところが小学校に上がったとたん子どもが自由にむらがっている時間は2時間にも満たないのです。中、高校になればさらに減ります。部活動は義理でやっていない限り、自分がしたいことをむれの中で実現していると考えられます。ただ、部活動をしていない子どもは、むらがることなく孤立している場合もあるでしょう。一種のアウトローみたいな状態です。
 では、むれを作っていくためにはどうすればいいのでしょうか。むらがる場を作るか、むらがっている場に参加していくだけのことです。自分のしたいことがはっきりしていれば、時間のやりくりと外向きの気力だけで実現しそうです。
 1950年代、むれとしての共同体を維持するために自発的な組織ができていった経緯があります。子供会、青年団など。現在は生涯学習という枠組みの中で再編成されつつあります。ただし、必要に迫られて自発的にむらがっていないところがあるのは気になります。身近なところでは、父母の会とか、同好会とか、少年団活動とか、既成の場に参加していくことも一つの方法ですが、義理となれあいを通過する努力が必要になる場合もあります。
 内に閉じこもることなく一定の社会関係を作っていけば、むれの中での子育てが可能となるでしょう。その結果、自分とは異なる価値観にもまれて、自立への手がかりを見つけていくことができます。子どもの手によって子どもが主体となってむらがる場をくぐらせたいものです。