鍵になる手伝い
 手伝いは、子どもたちが体で覚えていく大切な学習の場です。子どもといっしょにいるときは、いつでも、どこでもできることです。意図的にわざとにならないようにし向けるだけです。「この子の将来のために」というひそかな思いで、チャンスを生かしてください。
 手伝いが子どもの手に渡らない原因として、「上手にできない」、「待てない」という自分の都合が優先していないでしょうか。最初から手際よく、上手にできる人は一人もいません。「まね」をして、「慣れ」て、「要領よく」なっていきます。子どもにさせる手伝いを親が無意識のうちに取り上げてしまっていると思います。もしかしたら、自分も親にそうしてもらってきたから、同じようにするという考えの方もおられるでしょう。
 もう一つの理由があります。生活様式が昔と決定的に変わったことで手伝いをさせるのに苦労するようになりました。ご飯を炊く、掃除をする、洗濯をする、、買い物をする、旅行をするなどありとあらゆる部分で、便利になったことをすんなり受け入れてきたわけです。家庭だけでなく、社会全体がそうなってしまったと考えてもいいでしょう。本当なら時間的にゆとりが生まれてもいいのですが、別のことに費やされています。便利になっても、過程を大切にする考えがあれば、失ってしまった手伝いのできる部分を取り戻すことは可能でしょう。
 一つのことを約束して習慣化させる目的は考えない方がいいと思います。しないときに腹を立ててしまうことが多くなるでしょう。それよりも幅広く体験させ方が得策です。例えば、風呂掃除を毎日してくれるようになると自分の仕事が一つ減ると考えるのは親の都合です。仕事が減った分、親がそれに見合うだけの値打ちのある活動をしていれば子どもも納得するでしょう。ごろ寝でテレビを見て暇つぶししていれば、子どもにとって風呂掃除の手伝いの値打ちは薄れてしまうからです。
 一人でも生活していける知恵は0歳後半から形作られます。本格的に自立していくのは3歳前後からです。生活を自立させていく過程として、手伝いという体験学習を必ず実行してほしいと思います。