体験をさせる子育て
 体験させて子どもを育てることの大切さが繰り返し注目されてます。電化製品、交通手段、通信手段などがめざましく発達したおかげで、見かけの便利さと引き替えに体験することをたくさん失っている現実があります。便利になっているのですから、生活にゆとりの時間はできたはずです。でも、「忙しい」という言葉は増えています。気分的なゆとりを作るためにテレビのスイッチを入れないのも一つの方法です。
 ては、どうして体験が必要なのでしょうか。答えは簡単です。目と耳からの情報である文字や絵だけでは、人間の脳は成長しません。指先を動かし、体で一つ一つ覚えていくことで脳は成長してきたはずです。1歳過ぎぐらいから見よう見まねでスプーンやフォークついには箸まで持って食事していくころを思い出してください。箸が使えるようになると鉛筆も使え、文字を書く練習をすることができます。持ち方は一緒だからです。こぼすばかりするからと思って、いつまでもスプーンとフォークで食べさせていると箸を使いこなすという体験は奪われてしまいます。やがては、その体験を取り返すために多くの苦労を重ねることでしょう。鉛筆と箸の持ち方は基本的な出発点で同じだということをしっかり受け止めてほしいのです。人間にとって食べることは必要不可欠なことです。ナイフやフォークで食べる習慣もあるのに、箸が上手に使えなくたっていいではないかといわれそうです。日本語を学ぶから、箸も大事にしたいのです。日本的な脳の訓練にぴったりの生活習慣なのです。
 ひもを結ぶ。卵を割る。紙を折る。手を洗う。ボタンをはめる。何気なく日常していることが、できない子どもにとっては大切な勉強材料になっています。時間をかけて、やらせて、できるようになったら、親子共々喜びを分かち合ってみましょう。言葉や計算を覚えることよりも大切だということは、10年後、20年後に結果となって表れます。